(上)南雲勝志さんデザインの「杉太」。たったこれだけで、どうしてこんなにかっこいいんでしょうか。杉そのものを現した究極のデザイン、と言わせていただきます。ちなみに、受注販売されています。
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だかしかし、出会ったものの、私はまだ杉にちゃんと向き合っていなかった。それに気づかされたのが、「杉太」との出会いだ。今、杉仲間として一緒に活動する、デザイナー南雲勝志さんがデザインしたそのベンチは、柱材に使われる一般的な角材を切ってそのまま用いたもの。スチールの愛嬌ある脚がちょこっとついているだけで、そのまんまじゃん、と言われればそうなのだが、そこがこのデザインのすばらしさで、何もしていない加減が絶妙なのだ。杉太を初めて見たとき、そのデカイ角材でアタマを後から思いっきりひっぱたかれたような衝撃が走った。大げさに聞こえるかもしれないが、この月刊『杉』もそこから始まったと思うと、あの衝撃はやはり人の人生を変えるぐらいの大きな出来事だったのだと思う。では、何がそんなに衝撃だったのか……。そこにあるのはただの杉の角材なのに、これまで見て知っていた杉材とはまったく別物になっていて、それなのにどんな杉材よりももっと杉杉(すぎすぎ)している、そんな不思議な杉の表情やら空気感がものすごくおもしろく感じられたのだ。「今まで私は杉のどこを見てきたのだろう」って真剣に思った。そして、そういった杉の潜在的な魅力を引き出した南雲さんのデザイン力に脱帽した。完成度が高いとか、そういうデザイン力ではない。愛あるデザインというとなんか安っぽい響きになってしまうけど、でもホントにそう感じられた。もしかして、デザインってこういうことなのかな?
とも。「杉ってなんておもしろいんだろう。杉くん、お前、かっこいいよ」心からそう思ったのだった。
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