“杉は日本の杉であった”「杉の来た道:遠山富太郎著」の冒頭言に魅了された木材工芸科時代から、気になる
木材のひとつに『スギ』がありました。
木材至上主義を夢想し、全国林学関連大学周辺の古書店をさるきまわり、北大前で、絶版「木材ノ工藝的利用」農商務省山林局編(現在復刻)に遭遇した喜びと同様の感銘を覚えた文献のひとつ「スギのきた道」が、また、いま、輝きを益しはじめているようです。
スギダラケ倶楽部が日本全国に広がりつつある中で、宮崎県内でもまた、新たな活動が始まっています。飫肥杉(オビスギ)の魅力を再考し、さらに新たな価値を創造していこうとする県南地域(北郷日南南郷串間)2006エコプロダクツ出展準備会の人々。地域の誇りと繁栄に貢献してきた「飫肥杉」を全国ブランド「日本の飫肥杉」に育てようとする力、飫肥杉に纏わるデザインと夢の広がりを応援してください。
約30年前、民芸調家具デザインを基に試作開発された「飫肥杉製の飾り棚」があります。全国家具博覧会で上位入選したそうですが、残念ながら全国市場展開できませんでした。飫肥杉材を活かすデザイン・木材加工・塗装表面処理等の技術水準は高いものでしたが、「柔らかく・傷がつきやすい」飫肥杉材の素材特性が家具流通の最大の欠点となりました。江戸・明治・大正・昭和・日本の家具調度品の主な部材には、加工性が良く、軽く通直なスギ材が活用されていた木材利用の歴史があったにもかかわらず、市場経済・商品経済優先の中で、飫肥杉はブランド力を構築できない「傷つきやすい」欠点のある木材として位置づけられたようです。
10数年ほど前、宮崎杉(品種的にオビスギ)の活用を目指していくつかのデザイン試作研究を行ったことがあります。飫肥杉の素材特性とテクスチャーイメージ(材質感)を捉え直しました。
カジュアル素材(SoftWood)がデザインコンセプトの中心でした。
オビスギは温暖な気候のなかで育ち、成長が早いお陰で、柔らかくおおらかな広々とした材質感が魅力です。
特に、家具用材としては、年輪幅が広く軽やかな幅広板材(特に根曲材)はテーブルトップにも有用です。
銘木スギ材(秋田スギや屋久スギ)にない家具用材としての特性のひとつと考えられます。
また、弁甲材(船用材)に利用された柔軟さや手触り感(足触り感)の良さも現代生活に活用される素材特性と考えられます。これは現在、住宅床用材としての利用途が広まり、多くの人に認知されているようです。
今後の飫肥杉の住宅家具用材の魅力のひとつは6~80年生以上の飫肥杉(本飫肥杉?新名称募集)は樹脂分等の素材特性によるものか、年月の経過とともに雅美感など材質感に深みがますことがあげられます。
現在、県南地域でも百年生以上の飫肥杉は希少ではあるようですが、混成植林振興等、期待は持てそうです。
なんでもゆるしてくれそうなおおらかな飫肥杉の魅力は、遠く北国の人々の団らんのなかでも活きていけそうな気がしますし、考えようによっては、日本の木材資源・地球環境を考慮した樹木(スギ)と人々の生活とデザイン!「百年の計は日本のスギ・飫肥杉にあり」と夢想したくなるのは、秋の夜の酒のせいかもしれません。
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