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滋賀からの杉便り |
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今回のスギダラな人々探訪は、今ノリにノッてる関西からです。昨年末に関西支部のブログを開設し、それほど多くの投稿があるわけではないのですが、各投稿に対する書き込みの多さときたら、まるで掲示板並みです。まあ、そういうブログの使い方もあるのかも知れないですね。
とにかくノッてます。関西のメンバー。支部の愛称も決まったみたいです。
「スギやねん、関西」 句点が入っているところがニクイですねー! うん、いい名前だ。
ご覧になった方も多いと思いますが、あのスギダラはっぴの企画には参りました。秋田、宮崎、北部九州仕様もあります。何とスギダラ広報宣伝部長、つまりわたくしのための特別仕様の図柄まであって・・・ちゃんとチヨネクタイをしてるところがス・テ・キ! 東京は漢字でなく「TOKYO」になってるのがいいですね。
さすがです、うまい!
このはっぴとTシャツ、是非とも実現して欲しいと思います。ボクは全て揃えて各地区に行く時にはそれぞれの支部用はっぴでドレスアップして参上したいと思います。
まだ見てない人は関西支部のブログへ急げ!→http://sugikan.exblog.jp/
それと関西のメンバーで4月にミヤダラ襲撃計画も立てているとの事で、俄然活動が活発になっています。このノリに負けたくないと思っているスギフリークな読者諸氏のツアー乱入も期待したいところです。
関西の杉と言えば、奈良の吉野杉や京都の北山杉が有名ですが、杉材ではあまり名の通っていない滋賀県に一際暑苦しいスギダラな男がいます。今回のスギダラな人々探訪は「サワダラ」こと澤田藤司直(サワダトシナオ)さんをご紹介・・・と言うか、ご自身に滋賀の杉事情について語っていただきます。澤田さんはご家族で株式会社マルトという住宅建築と製材業の会社を営んでおられ、ご本人は製材部門の担当だそうです。→http://www.maruto-s.com/
それでは澤田さんのスギダラ奮闘記をご覧ください。
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■滋賀県
みなさん滋賀県と聞いて何を連想されますか?
おそらくほとんどの方が「琵琶湖」だと思います。 |
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では滋賀県の木材って知ってますか?知らないですよね。当然です。だって滋賀県の木材にはブランドが無いし特筆するほどの良材が生産されていませんから。
ごく一部では生産されていますがそんな良材は伐採後県外の市場に並んでいるみたいです。
それではこれから滋賀県の森林、木材事情について私なりに感じる事、思う事を書いてみたいと思います。あくまで「私なりに」です。
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彦根から見た琵琶湖 |
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■琵琶湖森林づくり県民税
この税は、平成18年4月から徴収される事になった税金です。
税額は個人は年額800円、法人は資本金等の金額により年額2,200円〜88,000円
です。
し・か・し、県民の中にはこの税金を払ってる事を知らない人もかなりいます(うちの嫁も知り
ませんでした)。・・・って事はこの税の使い道を知らない方が多い訳ですよ。
要するに琵琶湖と人々の暮らしを支える森林づくりの推進に使われるみたいです。はい。
この森林づくりの資料を見ていると、「広く県民が森林に対する理解と関心を深め県民協働によ
る森林づくりを推進する」と書いていますが・・・・
関心が無いのは県民が悪いのか、行政が悪いのかは分かりませんが、税金なので大切に使ってほ
しいものですね。
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森から生まれた、滋賀の森の精・ボズー!(こんなのいたの知らなかったな〜)
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■強度間伐
全国的な問題ですが滋賀県の山も手入れされず放置された山が多いです。
滋賀県の森林面積の約4割が個人有林です。手入れの行き届いた山を見る事もあまりないです。
国有林や県有林、森林組合や公社の山ですら手入れされてないのに個人が山の手入れなんかしま
せんよね。やはり木材価格の低迷が一番の理由だと思います。そこで滋賀県では琵琶湖森林づく
り県民税を使い「陽光差し込む健康な森林づくり事業」として、道から遠く離れ(500m程度)
放置された人工林を強度の間伐をして針葉樹と広葉樹が入り混じった針広混交林に導くそうです。
これは森林所有者と協定を結び実施されるのですが、協定内容の中で気になるのが「40%以上
の強度間伐の実施」です。もちろん間伐をする事や混交林にする事に異論はないのですが強度間
伐となると様々な問題もあるのではと思います。
・下草も生えず木の根が露出している山で強度間伐をすれば大雨、強風、雪に耐えられるのかな?
・間伐をして林内照度を上げただけで高木性広葉樹が進入し育つのかな?
・間伐材は放置したままなのかな?
考えだしたらきりがないですが山の崩壊、自然災害に繋がらないように慎重に進めてほしいです
ね。 |
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間伐材を放置したままの山 |
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■びわこ材 柱100本プレゼント
びわこ材って何? 琵琶湖に木が生えてるの?と思われた方、ちがいまっせ〜。びわこ材とは滋
賀県で始まった産地証明事業です。県内の何処に生えてた木か、誰が伐採したのか、誰が原木を
買ったのか、誰が製材したのか、誰が製品を買ったのか、などをエンドユーザーに分かるように
するシステムです。また県産材である事を証明することによって輸送に伴うCO2排出の低減に貢
献している環境に優しい木材という事をアピールする狙いがあるみたいです。
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びわこ材のマーク |
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また滋賀県では木材の地産地消を進めるために「木の香る淡海(おうみ)の家推進事業」として
一戸あたり最高100本のびわこ材の柱(3m*12cm角)を無料提供という事業があります。
これは何時でも誰でも貰える訳ではなく、募集時期や提供される戸数(平成18年度は募集期間
が9月〜12月、提供戸数は43戸分)があります。また申し込み条件があり、その中には「提
供された柱材と同量以上のびわこ材を使用する住宅であること」とあります。
つまり3m*12cm角の柱70本(約3m3)を提供してほしければ、土台、梁、桁、垂木など
でびわこ材を3m3以上使用しなければならないわけです。す、すばらしい。ここで我らの『杉』
の出番です。土台に杉は使いませんが梁や桁や垂木は杉でいけます。
し・か・し、多少問題もあります。提供される柱は基本的に桧の一等材なのです。昨年まではオ
ール桧でしたが今年度は、桧8割以内、杉2割以上なのです。材種にこだわらない方はいいので
すが、杉にこだわる方は諦めるしかないです。それと着工時期と柱の提供の時期が合わないとこ
れも諦めるしかないです。応募者多数の場合は抽選なので外れたら諦めるしかないです。はい。
この柱100本プレゼントの状況を県の職員の方とお話をしていると柱の提供を受けた家を職員
の方が見にいくと家の中が大壁になっていて柱が隠れてしまっている家が結構あるみたいです。
これは県の思いと施主、建築業者の思いに差があるんですね。県としては提供された柱が使われ
ているのはいいのですが、柱が隠れてしまうと施主やこの家に遊びに来た人にびわこ材をPRでき
ないですよね。
施主、建築業者からするとタダで貰えるものは貰っちゃえ!て感じなんでしょう。
せっかく県産材が使われているのに壁の中に隠れてしまうとは、滋賀県知事じゃないですけど
『もったいない』。 |
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提供を受けたびわこ材の柱 |
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■建築事例
これは滋賀県の事ではないんですよ。じつは私は家族で工務店、製材所を営んでいます。
その中で私は製材、山仕事を主に担当しています。だから今まで書いた事は山仕事(伐採、搬出)をしたり製材をしたり建築現場に行ったりする中で私個人が感じる事を書かせていただきました。「私なりに」です。
建築事例とは私の会社で建てさせて頂いた家の事例を紹介させていただきます。
<T・H邸>
3年程前に20代後半の方が私の会社を訪問してくださり「おじいちゃんの植えた木で家を建て
られますか?」と尋ねられました。営業が話を聞くとT・H様は何件か工務店やメーカーを回ら
れて同じ質問をされていましたが「できない」か「できるけど高くつく」との返事ばかりだった
そうです。そこで実際に山を見に行く事になりました。おじいさんの植えられた木は林道の脇に
あり、私の会社で伐採、搬出が可能なので、「おじいちゃんの植えた木を使った家づくり」がス
タートしました。普段はしませんが今回は立ち枯らしという手法を取り入れました。 |
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立ち枯らし風景(木の下部の皮を剥くことにより水分の吸い上げを減らす方法)
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皮むき作業中 |
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立ち枯らし後、秋に伐採をして冬の間葉枯らし乾燥をして春に搬出して製材をしました。そして
完成したら玄関でお出迎えしてくれる丸柱の皮剥きをT・H様とお父様(つまりおじいちゃんの
息子と孫ですね)が自らしてくださりました。立ち枯らし+旬切り+葉枯らしした丸太は水分が
少ないので皮を剥くのは大変ですがおじいちゃんが植え、育てられた木なので頑張っておられま
した。そして上棟となりますが、この家の柱は滋賀県の柱プレゼントでもらわれた柱を使ってい
ます。そして造作など工事がおわり完成しましたが、この家の素晴らしい所は柱や構造材がどこ
の山の木が使われているのかが明白な点です。
きっとT・H様のお子様が大きくなられたら、「ここに見える木はおとうさんのおじいちゃんが
植えて育てた木だよ」 なんて会話をされるのかと思うとすごく羨ましく思います。
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皮剥きをされた丸柱
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おじいちゃんの木と県から提供を受けた柱 |
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このT・H様の思いにより完成した家が昨年「滋賀県こだわり住宅」として表彰されました。
これはもうT・H様というお客様に出会えて、この家づくりのパートナーに選んでいただいた事に感謝です。
そして昨秋おじいちゃんから繋がれた思いを子孫へ繋げるために植林をされました。 |
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T・H様植林中 |
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なんかダラダラと何が言いたいのか分からない文になってしまいましたがそろそろ締めにはいり
ます。あと少し辛抱してください。
私の会社としては今後地元の木を使った家作りに力を入れて行きたいです。山をお持ちの方はそ
の木を活かして、お持ちでない方には自社で製材した材で建てていただけるように努力をしてい
ます。現在は新月伐採に取り組んでいます。山で立木を買い、伐採は秋から冬にかけての新月、
春までは山で葉枯らし、その後搬出、製材。一年中食べられる野菜や果物よりもやはり旬の物が
おいしいのと一緒で、木も旬で伐採したほうがいいと思います。全国的に言える事ですが、地元
の木で家を建てるにはこれから杉が主役になるはずです。外材の値上がり、松枯れなどでその代
役になれるのは杉だと思います。杉の未来は明るいと思います。しかし本当に明るくなるかどう
かは官、学、民が一体となって山の現状を見て対策を練って行動する事だと思います。これから
も「杉のためにできること」「杉を使ってできること」(by出来杉計画)を無い知恵を絞って
考え行動していきたいと思います。全国のスギダラの皆様、これからもよろスギッツ!
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新月伐採後製材したびわこ材
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サワダラ作 ホースギ君(娘へのプレゼント) |
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以上、サワダラさんからの杉便りでした。おじいさんが植林した木で家を建てたお孫さんの話。
感動しました。自ら皮むきやったり、伐採した後に植林したり・・・失礼ながら若いのに大した
もんですね。こんな話を聞くと世の中捨てたもんじゃない! 未来は明るいぜ! と思います。
やはり、杉と共に歩んでいると素晴らしい出会いがあるのですね。澤田さん、そんな出会いがこ
れからも続いてゆくといいですね。みんなで頑張ろーーー! おーーー!(ち) |
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●<ちよだ・けんいち>インハウス・プロダクトデザイナー
株式会社内田洋行 テクニカルデザインセンター所属。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部広報宣伝部長
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