|
屏の門をくぐると圧倒される、中には建物がびっしりと隙間なく軒を連ねている。宿根木の特徴は家屋の密集性にある。路地はほんの1m程度、広いところでも2m程度であろうか。引いて写真を撮りたくてもなかなかとれない。それほど狭い。詳しくは調べなかったが、恐らく火事や防火にはそうとう工夫をしていただろう。
|
|
 |
|
 |
|
内部は驚くほど狭い路地。人がやっとすれ違えるほどだ。そこに御影石が敷いてあったり、水路が流れ、歴史の重みを感じる。
風雪に耐えた杉板が風情を感じさせると同時に痛々しくもある。
|
|
小木や宿根木の屋根は「
木羽葺石置き屋根」と呼ばれる石屋根で知られる。強い日本海からの強風から屋根を守るために杉の板張りの上に石を並べるのだ。ずいぶん少なくなってきてはいるが、まだ所々見かけることが出来る。これもまた何ともいえず、美しい
|
|
 |
|
「 木羽葺石置き屋根」
保守も含め丹念に丁寧な施工技術が必要だ。一般の新築で用いられることはまずない。
|
|
宿根木に住んでいた多くの船大工。そんな環境から宿根木の家は船大工の手が多く使われている。よく知られている3角形の敷地に建つ家は、まさに舟形をしているし、緩やかな曲線も使われている。そして材料も厚い板が多い。そんな理由で宿根木の家はどっしりと、しっかりして見える。そして品がある。
明治以降、鉄路や道路といった陸運が中心になり、海運のまち宿根木の繁栄は過去のものとなり衰退していった。まちそのものも老朽化し、維持自体が難しくなった。平成3年、この特徴的なまちなみを保存維持していく必要性から「重要伝統的建造物群保存地区」に指定された。徐々に再生が進んでいるところである。このあたりは本誌10号で紹介した、宮崎県日向市の美々津の待ちとも運命が似ている。
廻船による栄光とその衰退。そんな歴史の変化を宿根木のまちは見せてくれている。
社会状況の変化とともに自分たちの意志とは無関係にまちは変化していく。そしてこれからどうなっていくのだろう。
先月号の摂田屋もそうであったが、今現在住む人の意志でどの程度保つことが出来るのだろう。それを何とか維持していくことは本当に必要なのだろうか? 果たして自分がそんな状況にいたら、どうするのだろう。
いい風景だ。最近のまちにはない素晴らしい雰囲気を持っている。そう思いながらもそこに住み、守り続ける勇気は今はまだない。
|
|
 |
|
三角形の敷地一杯に建つ総二階住居
|
|
 |
|
杉板縦張りの外壁は、佐渡ではめずらしくないが、新潟では佐渡だけだろう。凛として品がある。
|
|
 |
|
宿根木のまちなみ。上は宿根木港。
道路からは簡単に見えないため、全体を把握することは難しい。少し歩いて高台からみるとこのような風景が見える。なんだか懐かしくもあり、寂しくもある。宿根木の集落はとても小さいことがわかる。
約100m四方ほどの大きさの中に100件ほどの家がぎっしりと詰まっている。
|
|
|
|
|
|
●<なぐも・かつし>デザイナー
ナグモデザイン事務所 代表。新潟県六日町生まれ。
家具や景観プロダクトを中心に活動。最近はひとやまちづくりを通したデザインに奮闘。
著書『デザイン図鑑+ナグモノガタリ』(ラトルズ)など。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部
|
|
|