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緑の葛の葉が風にふかれて白い裏を見せる。白狐、手漉き紙の白と、それを漉く乙女の白い指。吉野葛というタイトルが葛粉の白を彷佛させるせいか、この物語は白い印象…、と一度きりしか読んでないものをふりかえると、ふっと「ずくし柿」の透明に真っ赤に熟したのが思い出される。そして秋の吉野の山の色。 吉野が舞台なら杉のひとつやふたつ出てくるだろうと気安く手にとったが、ほんとにひとつふたつの杉の文字があっただけだった。杉とは書いていないが、筏師の話がでてくるのも杉を運んだのだろう。杉のことを少し知ってからは想像できる映像が具体的になったかもしれない。 さて、杉がでてくる情景は、 物語の最後のほうで主人公は「木深い杉林の中」を案内の人につれられておっかなびっくり行く。運動神経があまりよくない彼はけっきょく足元ばかり気になって風景を楽しむことができなかった。けれども読者はそれほどまで険しい道なら…とよりいっそうその風景の美しさに入っていける。 |
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●<いしだ・のりか> フリーランスキュレ−タ− 1965年京都生まれ、金沢にて小学2年時まで杉の校舎で杉の机と椅子に触れる。 「人と自然とものづくり」をキーワードに「手仕事」を執筆や展覧会企画などで紹介。 近著:「藍から青へ 自然の産物と手工芸」建築資料出版社 草虫暦:http://xusamusi.blog121.fc2.com/ ソトコト10月号より「plants and hands 草木と手仕事」連載開始(エスケープルートという2色刷りページ内) |
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