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オニグルミの実はよく海辺に落ちているので、「海のものだと思っていた」という人がいましたが、海に落ちているものはきれいに洗われているので拾い易いですよね。海辺の人は山に拾いに行かず海に拾いに行きます。 また、オニグルミは、植栽したわけでもないのに、沢沿いや湿り気のある土地などでは一斉林となっています。それにはいろいろ理由があるのですが詳しくは本文で。 第20回目は「オニグルミ」です。 |
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紅色が目立つオニグルミの花 平成22年5月7日撮影 | ||||||||||||||||
北海道から九州まで分布し、川岸などに生育している落葉高木で時には25mくらいになります。5月頃若葉とともに花を出し、雌雄同株で雄花序は緑色で長さ10〜30cm、前年の枝の葉腋から垂れ下がり、雌花は本年枝の先端に上向きにでき小さい紅色の花を穂状につけます。 葉は枝先に集まって互生する大型の奇数羽状複葉で、葉柄を入れると80cmにもなります。 そんなオニグルミですが、どのように使われてきたのでしょうか。 |
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●実を食用に | ||||||||||||||||
クルミの実は昔から親しまれてきたもので、縄文時代の遺跡からも殻が見つかっています。栄養価が極めて高く脂肪油が50〜60%も含まれるので、クルミ油としての需要も多いです。 料理用やお菓子用に使われますが、剥いて販売されているもののほとんどはカシグルミの系統で、オニグルミはまず売っていません。オニグルミは殻付きのまま拾うなり買うなりして自分で割って楊子などで仁を取り出して使います。 よくカラスが舗装された道路や駐車場に上空からクルミを落しているのを見かけますが、その食べた後の殻をみると、大変きれいなのであのくちばしでよく食べ残しもなく食べたものだと感心します。 |
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●材の利用 | ||||||||||||||||
クルミ材のもっとも有名な使い方は「銃床」です。理由は比較的軽く、狂いや割れが少ないこと、油を一緒に拭くとつやが出る、またショックが吸収され反発しないという利点があるためです。 日本でも銃の渡来以来銃床材はオニグルミと決まっていました。しかし、物資不足のため太平洋戦争の際にはブナが代用材として使われたが、オニグルミには到底及ばなかったようです。ブナは乾燥が困難で狂いが多いためです。 他にはその軽さと狂わなさから三脚、枠材、箱、航空機のプロペラなどに利用されましたが、今ではジュラルミンに変わってしまいました。 また、チーク材に材質が似ることから家具、測量・医療機械外函、時計の枠、ラケツト、銀杏板、敷居、洋風建物及指物彫刻、木象嵌、挽物などに利用しました。 |
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●語源と方言 | ||||||||||||||||
樹木を覚え始めたころは方言名などには興味がなかったのですが、今は、方言名こそ重要な情報が詰まっており、方言名を良く知ることが必要だと思っています。 クルミ、クルミノキ、グルミ、グルビ、クルビ、グルメキ、クルビノキ、クルメ、クリビ、クルベノキ、ヒグルミ、オグルミ、オクルミ、ホングルミ、クロビ、クロベ、クヒビ、コグルミ、ミグルミ、マルグルミ、ゴンミグルミ、ヤマクルミ、オオクルミ、オトコグルミ、ダンゴグルミ、ボヤ、ワカギ、オッコロシ、オッコロミ、ノグウメ、ノブ、ヤチオコギ、ヤマギリ、ウルシ。 樹木大図説Tから引用。歴史的かなづかいは改めた。 |
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●薬草として | ||||||||||||||||
クルミの外果皮は「胡桃青皮」といい、毛生え薬に利用し、また、髪の毛を洗うと黒くつやが出る効果があるとされています。未熟果皮にはナフトキノン誘導体であるユグロン(juglone C10H6O3)が含まれており、抗菌作用があるため痔の治療薬に使われます。 葉や樹皮にはタンニンが多いので煎じた汁を駆虫剤や濃厚な煎汁は毛生え薬にしました。 クルミの油は皮膚病などの外用に使用しました。なお、この油は冬でも凍らないので寒い時期の屋外灯火用には重宝されたことと思われます。 |
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●アレロパシー | ||||||||||||||||
アレロパシーとは他感作用といい「ある植物から放出される化学物質が、他の植物に阻害あるいは促進作用などの何らかの影響を及ぼす現象」のことを意味しています。ここでは植物としていますが、昆虫・小動物などに対する影響も含める場合もあります。 さて、このアレロパシーですが、オニグルミにもあり、先ほどのユグロンという物質は強い植物生育阻害物質で、各種実験で効果が確認されています。 オニグルミが生えている場所は川岸などが多いのですが、山の中などで生えているところを見ますと、植えたわけでもないのにオニグルミしか生えていないのです。しかも下草程度しか生えておらず、潅木類はあまり見かけません。 オニグルミは樹皮や果実、落ち葉などにユグロンを含むのでそれが土壌に作用し、他の植物の根の呼吸阻害や窒素固定阻害を起こすと考えられています。 |
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オニグルミの雄花序 平成22年5月7日撮影 | ||||||||||||||||
●その他の利用 根皮は多量のタンニンを含むため皮なめし用に使います。これでなめすと皮の色が赤味を帯び、嫌がられますが、若木のものは色が薄いので利用できます。 樹皮は網の染料や防腐剤に用います。葉は砕いて川に流して魚毒として用いました。 利用ではありませんが、冬芽(+葉痕)は愛らしいヒツジの顔にみえます。 |
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ヒツジの顔そっくり | ||||||||||||||||
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何年かすると木が太りヒツジの部分がこんな風になってしまいます。こうなるとヒツジの面影はありません。 | ||||||||||||||||
【標準和名:オニグルミ 学名:Juglans mandshurica var. sieboldiana(クルミ科クルミ属)】 | ||||||||||||||||
●<いわい・じゅんじ> 樹木の利用方法の歴史を調べるうち、民俗学の面白さに目覚め、最近は「植物(樹木)民俗学」の調査がライフワークになりつつある。 『いろいろな樹木とその利用』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_iwai.htm |
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