![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
|
||||||||||||||||
![]() |
2011年6月9日、本郷の居酒屋「ゆい」で、大槌の復興支援を行っている東大景観研究室の中井さんに屋台作戦の概要を聞いていた。 ● 6月14日東大の復興支援チームに同行し、岩手に向かう。朝一番の新幹線に飛び乗り、北上駅で尾崎さん達と合流、前泊の中井さんと落ち合う。そのまま車で大槌に向かう。2時間程度掛かり現場に着いたのは昼頃だった。あたり一面何も無くなってしまった中に小槌神社が残っていった。400年以上の歴史を誇る由緒ある神社だ。鳥居には火に焼かれた跡が生々しく残っているが、奇跡的に無事だった。その神社の前が屋台作戦の候補地である。「何とかここにねぇ、地域のよりどころを作りたいのですよ。」中井さんが言う。ひととおり現地を確認した後、3kmほど先の会食の場、波板海岸「さんずろ屋」に向かう。ここは高台に建っているため難を逃れた。そこから見える砂浜と松の光景は、あれほどの津波が来たとは信じられないほど平穏で美しかった。 |
|||||||||||||||
![]() |
![]() |
|||||||||||||||
屋台設置候補地。鳥居の向こうが小槌神社 | 小槌神社側からまちを望む | |||||||||||||||
![]() |
![]() |
|||||||||||||||
さんずろ屋から見る海岸の風景。いつもは海水浴場。 | 同じく南側を見る。この辺は靄が多いらしい | |||||||||||||||
間もなく柏崎さん、奥さんのミカさん、そして赤崎さんらと会う。赤崎さん自身も被災者でありながら、しかも30代の若さでありながら、その立ち振る舞いの元気なことに正直言って驚いた。とにかく頑張るしかないんです。その言葉にはひとつのブレも感じられないどころか自分よりよりまず他人、の精神が伺える。 |
||||||||||||||||
![]() |
![]() |
|||||||||||||||
上田製材所着。 | 仕えそうな木を物色 | |||||||||||||||
![]() |
![]() |
|||||||||||||||
これは天板に使えそうだ。 | これは垂木にちょうどいい。 | |||||||||||||||
しかし、なんと素晴らしい連係プレーだろう。良い感触を掴みながら釜石駅に着く。釜石で合流した西山さんにその事を興奮しながら語り、ビールを買い込み電車に乗り帰路に着いた。 ● 次回打合せまで2週間時間貰った。それまでに屋台のデザインスケッチ、モデル、図面などを用意する事になった。途中東京で尾崎さんと打合せを行い、こちらのイメージを共有する。最初の第一ステップ、それで終わりではなく、発展系も理想形としてイメージしておこう。つまり最終的に地域のパブリック空間を作ることを目標にした。 |
||||||||||||||||
![]() |
||||||||||||||||
屋台村将来構想スケッチ(出水) | ||||||||||||||||
![]() |
||||||||||||||||
屋台村モデル(出水、廣瀬)左から屋、テーブル、ベンチ、台絵馬小屋 |
||||||||||||||||
● そして再び大槌を訪れたのは6月27日。あいにくの雨であった。打合せ場所は避難所に利用されている小学校の廊下を借りて行った。聞くところによると、朝柏崎さんが、朝ズバに出たという。「屋台やるって言いましたよう。」実に嬉しそうだ。用意した資料やモデルで打合せはとんとんと進み、未来の事にも話しは及ぶ。製作内容、ボリュウムが決定し、具体的な作戦がスタートした。そして、屋台オープンのXデーは7月24日に決定した。→打合せの模様 |
||||||||||||||||
そんな事で一日が終わり民宿へ。場所は先ほどの「さんずろ屋」の向かいで「タカマス」というこのあたりの唯一といってもいい宿だ。作業員も多く宿泊するためなかなか予約を取るのが大変だという。夕食もそこそこに部屋に帰り、東大チームと飲み語った。何を話したかは良く覚えていないが、話しが弾み、ちょびちょび飲み出した日本酒を最終一升飲み干したことだけは覚えている。 |
![]() |
|||||||||||||||
民宿タカマス:大変お世話になりました。 |
||||||||||||||||
翌日は大槌周囲の現場を見たり、屋台設置現場を再確認したりした。小槌神社境内が暗唱に上がった。神社の境内はそう簡単に一般に貸せるものではないらしい。そりゃそうだ。結局設置場所は一旦振り出しに戻り、他の候補地を数カ所見て回った。後はまたしても柏崎さんの人脈頼みで何とかして下さい。ということで落ち着いた。 ● そして、7月1日〜2日、熱い熱いGS24(24時間ぶっ続け大作戦)が盛況に終わった。 一言では語れないので今回は内容は省略。また改めて。 |
||||||||||||||||
![]() |
![]() |
|||||||||||||||
熱かったGS24の一コマ |
熱かったGS24の二コマ |
|||||||||||||||
GS24の興奮も覚めなか、気がつくとXデーまで2週間あまりしかない。尾崎さんは〜大槌屋台オープンまでの道のり〜というスケジュールと段取りを作り、関係者に定期的にメールを配信した。これでずいぶん流れが共有できた。大したものだ。こちらが数量を再チェック、上田さんに送る。上田さんはせっせと材料手配をしてくれている筈だ。その間地元チームの打合せ、道工具の確認、そして事前に地元でのホゾ加工などを始め、最終のオープンまでの道のりを具体的に示してくれた。 しかし高浜は高浜で超感動。すばらしい自然、素晴らしいまちなみ、すばらしい人々と二日間時間を共有する事が出来た。多分今月号の月刊杉にも情報が出ることと思う。環境は違えど、本質的に抱えているものは北も南も日本全国一緒のものがある。 |
||||||||||||||||
![]() |
![]() |
|||||||||||||||
高浜フィールドワーク(一日目) | 高浜fフィールドワーク(二日目)東シナ海 | |||||||||||||||
さて、Xデーは翌週へと迫った。アチコチ出張行くも大槌が気になって電話する。柏崎さんは、「う〜ん、じっさいなかなか難しいですが、そこは少し変更して対応していますから、大丈夫ですよ。」フッと不安になる。少し変更?どこをどう変更したのだろう。 上田さんは「製作を時々見ていますが、作業はかなり難航しています。うちも手伝ってあげたいのですが、仕事が佳境で現実なかなか厳しいです。すみません。」不安は増す。しかし冷静に考えて見ると、建具やさんが作るような奇麗な屋台を期待することの方がおかしい。みんなが力を合わせ、作りあげることに価値がある。多少かっこ悪くたって大事なことはそこなんだ。と納得。心配は解消する。尾崎さんも地元に配るチラシを作成した。(協力:スギダラの文字もちゃんと入っている。)作戦はいよいよ大詰めを迎えた。 ● そして出発の22日になる。本来は23日発であったが、それでは時間が足りず、前日の夜行バスで行く事になった。えっ待てよ、22日は若杉さんとBC工房の鈴木さんと10年ぶり呑もうと言っていたのだ。しかもその前に秋葉原に行って屋台の電球始め、電設の買い出しをしなければならない。夕方から走った。秋葉で猛ダッシュ。すべて買い出し終了し若杉さん達のいる青山へ向かう。と思った瞬間、さっき乗ったタクシーにバックを忘れていたことに気づく。すぐ電話をし、30分後にそのタクシーと再会。そのまま乗車し青山へ。助かった。 結局設置場所は小槌神社の真下に決定。実は一番最初の候補地だった。そこは柏崎さんの友人の土地で使用許可を貰えたという。素晴らしい人脈、良かった。そしてそこには柏崎さんの別の友人の協力で採石が積まれていた。チームは二班に分かれ、整地チームと屋台製作班。さっそく作業に入る。僕はその前に柏崎さんが瓦礫の中に見つけたキャスターが屋台に使用出来ないかどうか確認に行く。「あれですよ。」柏崎さんが指さしたものは瓦礫の山のトップにある歪んだ台車であった。「もう一つはあれです。二台分あります。」同様のものであったがサイズが違う。もっと言えばボルト接合であったので今回の木製屋台には使えそうもない。何とか諦めていただき、購入することにする。そして上田製材所脇の組み立て現場に向かう。 |
||||||||||||||||
![]() |
![]() |
|||||||||||||||
敷地に於かれた採石 | 採石を奇麗に整地する | |||||||||||||||
現地ではすでに漁師の方、大工さんにより一台目のフレームが組まれていた。ホゾ加工に苦労の後が伺える。頑張ってくれている。上田さんと全体的な打合せを行い、僕らはまず二台分の屋台の材料にプレーナー加工するところから始めた。材料的には相当の量がある。四人で流れ作業をするも相当腰に来た。午前中それで終わった。午後は屋台の仕上げと屋根班、ベンチ班に別れ作業を分担。話しによると今日の夕方プレオープンを行うという。一台目の完成は至上命題になった。 |
||||||||||||||||
![]() |
![]() |
|||||||||||||||
初めてのプレイナー加工 | 屋台製作。腰板梁。 | |||||||||||||||
![]() |
![]() |
|||||||||||||||
地元の漁師さん(左)キャスター取付。 | 老体にむち打ち!?天板固定。 | |||||||||||||||
![]() |
![]() |
|||||||||||||||
最終仕上 | 軽トラ積み込み | |||||||||||||||
柏崎さん夫妻はすでに仕込み、準備を終え、屋台の到着を待つばかりであった。所定の位置に屋台をセットすると自然と拍手が湧いた。ベンチテーブルも届き、プレオープニングがスタートした。関わった関係者が飲み語り、いつまでも笑い声があたりに響いていた。良い感じだ。ずっといたかったが照明も無いし、明日もある。心地よい疲労感を抱えたまま民宿タカマスに向かう。今日は初めからためらわず一升瓶を注文。疲れたが良かった。みんなで乾杯し美酒に浸る。 |
||||||||||||||||
![]() |
![]() |
|||||||||||||||
第一号運び込み | 第一号に満足げの柏崎夫妻 | |||||||||||||||
![]() |
![]() |
|||||||||||||||
さっそく営業開始。ホタテやアワビ! | 賑やかなプレオープン | |||||||||||||||
● 気がつくと風呂も入らないまま朝を迎える。今日はもう一台の屋台と絵馬小屋という小屋を二台、ベンチ4台作る予定。屋台は二台目なので結構はかどる。と思っていたが食事を挟み1時頃に焦り始める。現場からは3時にはすべてセッティング完了し、4時に本オープンをしたいとの連絡が入る。絵馬小屋を侮りすぎた。尾崎さん、原さんと段取りを行うもこれからホゾ加工を行い2台製作は不可能。結局ホゾ加工無し、製作台数一台に変更した。しかしそれも主材が木だからなせる技。人間の力で大抵のことは何とかなる。 |
||||||||||||||||
![]() |
![]() |
|||||||||||||||
第二号製作開始 | 分担作業、みんな協力 | |||||||||||||||
![]() |
![]() |
|||||||||||||||
屋根製作チーム | もうすぐ完成するぞ。屋根の最終位置調整 | |||||||||||||||
![]() |
![]() |
|||||||||||||||
テーブルのウマ。オーヅチ | こちらは絵馬小屋。みんなの思いを込める。 | |||||||||||||||
![]() |
![]() |
|||||||||||||||
第二号出荷。左が上田専務。頼りになります。 | 最後に絵馬小屋到着 | |||||||||||||||
みんなが頑張り、何とか何とか最低限の場が完成、「居酒屋ドン」の開店準備がが整った。4時過ぎに中井さんの音頭で乾杯!
疲れているのにみんな実にいい顔をしている。徐々に地元の皆さんも集まってくる。柏崎さんが自分の店名「居酒屋ドン」を筆で書き上げる。本当に嬉しそうだ。 そして点灯式を行い小さなあかりが灯った。本当に小さな、小さなあかりであるが、みんなが集まれる場所がとりあえずひとつ出来た。赤崎さん、柏崎さんのネットワーク、東大支援チーム、上田製材所、誰が欠けても出来なかった。みんなの力で出来た宝物である。 オーナーは柏崎さんであるが、この広場はきっと大槌のみんなの思いが詰まっている、そんな風に思えた。明らかに人間模様だ。そして「居酒屋ドン」の海の幸の焼き料理、アラ汁。奥さんの焼き鳥、みんな抜群に美味しい。アルコールの勢いもあって楽しい場は瞬く間に時間が過ぎていく。 それにしても柏崎さんの人脈には改めて恐れ入った。敷地、発電機、プロパン、果ては杉材まで何でもその日のうちに用立ててしまうのだから。 間もなく上田製材所の上田専務が見えた。大変だったがその顔は満足そうだ。「あなたがいたからこの屋台が出来た。本当にありがとう上田さん。」そしてその場でスギダラ大槌支部が結成されたのだった。 |
||||||||||||||||
![]() |
||||||||||||||||
ついにヤタイ村第一期完成。小さなあかりが灯った! | ||||||||||||||||
![]() |
||||||||||||||||
喜ぶ赤崎さん(左)、柏崎さん(右) | ||||||||||||||||
![]() |
||||||||||||||||
喜ぶ中井さん(右)と東大支援チームと赤崎さん(手前) | ||||||||||||||||
![]() |
||||||||||||||||
テーブルとベンチのセットもなかなか。これ既製品になりませんかねぇ。 | ||||||||||||||||
![]() |
||||||||||||||||
良い雰囲気、美味しい料理、楽しい会話。すべてが揃っている。 | ||||||||||||||||
![]() |
||||||||||||||||
徐々にあたりが闇に包まれてくる。明かりはより魅力を増す。 | ||||||||||||||||
![]() |
||||||||||||||||
宴もたけなわであるが徐々に時間が無くなってきた。また来ます。 | ||||||||||||||||
![]() |
||||||||||||||||
さあ、帰りの時間も近づいた。関係者一同記念撮影。みんなご苦労さん。とてもいい顔しています。 上田製材所のタオルを頭に巻く。前列右から三人目が上田さんです。ちなみに未婚! |
||||||||||||||||
楽しかった。充実した疲労感。さて大槌ローソン20時20分のバスに乗らなければならない。後ろ髪を引かれるように夜行バスに乗り込んだ。(つもりだった・・・) |
● あれから10日が経つ。徐々にお客さんは増えているという。ほんの小さなお手伝いであったが、これをひとつのきっかけに大槌の皆さんが共にに将来を語り、未来を描くそんな場に成長していくことを心から願っている。この場はみんなで作ったみんなのもの。ぜひこの場を多くの皆さんが利用して欲しい。 |
|||
PS: |
|||
|
|||
|
|||
● <なぐも・かつし> デザイナー
|
|||
|
|||
Copyright(C)
2005 GEKKAN SUGI all rights reserved |
|||