杉材を使って家具・建具を作らせていただく時に、お客様によく言う言葉がある。
「合板を作った品物は翌日から古くなりますが、本物の材料を使って作ると、翌日からこの家に合った味が出ます」と。
日光に当たり、薄い白ピンクの木肌が飴色に変色し、湿気・脂っ気などを吸い込み、その家の条件によって、その製品は自分なりに成熟していく。
そんな事を思うようになったのは、最近の事だ・・・。
もうすぐ還暦の時になり、自然物のわびさびが少しずつわかってきたのだろうか。
本物の木は夏に水分を含み、若干だが膨らみ、冬にはその水分を放出して少し痩せる。
それは使っていただくお客様へ最も気を使うところでもある。
当然、そのたびに、2ミリ3ミリの誤差が生じるので、それを許さないお客様には不向きである。
大敵は、つけっぱなしのエアコンと直射日光!
この場合、痩せるのみで、おまけに木目が曲がっていると乾燥と同時にねじれてしまう。
家のデザインや周りの雰囲気、ライフワーク、動線から建具・家具の材質・形・色を決めていき、お客様と膝をつき合わせて作っていく。
一つとして同じサイズ、デザインの物はない。
今、その醍醐味を、大学を卒業して後を継いでくれた息子と味わっている。
幸いにも、今年32歳になるその息子と一緒に28歳の娘も汗を流している。
子どもたちが、木材のわびさびをわかるようになるまでは、もう少しかかるだろうが・・・。
いつまで同じ仕事が出来るのだろうかと思う、今日この頃である。 |