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私は吉野地域特有の山守として林業(素材業)経営をさせていただいております中神木材の中井と申します。山守としては七代目、林業経営としては二代目です。 今回、吉野中央木材の石橋さんの知人ということで、縁あって月刊杉に始めて投稿させていただくことになりました。
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中神木材・代表、中井章太 | |||||||||||||
初めてということもあり、今までの林業への取り組みと今後の吉野林業の方向性をテーマに、私の吉野林業への想いを交えながら原稿を書かせていただきました。 | |||||||||||||
私は5年半のサラリーマンを経験した後、28歳(1996年)の時に家業の林業を継承しました。 |
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その不安を解決する前に、吉野林業にとって大きな転機となったのが、平成10年9月に発生した台風7号によるかつて経験したことのない倒木被害でした。何代にもわたり育て継承してきた山々が一瞬にして倒れてしまったのです。その光景は今でも鮮明に脳裏に焼きついています。 | |||||||||||||
商品価値をなくした吉野の木々は、価格下落をまねき、吉野林業そのものを低迷に追い込み、地域の活力をも徐々に低下させていきました。 しかしあの台風被害がなかったとしても、早かれ遅かれ現在の吉野の木材産業の低迷は生じていたように思います。 なぜならば吉野杉というブランド力が心の驕りとなり、時代のニーズに対応できる木材産業の確立に遅れをとってしまったからだと感じます。 元来、日本の木材業界をリードし、全国に世界に発信していく役割を果たさなければならない吉野が遅れをとっている現状にもどかしさを感じます。 |
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今思えば、あの平成10年の台風が、そして今おかれている木材産業の低迷が、吉野林業の原点を見つめ直し、新しい吉野の木材産業の方向性を導き出すきっかけになろうとしているように感じます。 私自身も、山守として素材生産業として、かつては一人前の木に育て、原木市場に出荷し、「高く売れれば良し」という経済合理主義に基づく考えが強く、その後の木材の流通まであまり意識していなかったのも事実です。 |
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しかし木材価格の下落とともに、このままの価格では循環型吉野林業ができなくなるという危機感から、何とか吉野材の特徴を直接顧客に伝えたいという想いのもと、インテリア商品の開発に取り組み、自社の木材を活用したパーテーションを作成し、平成18年に行われた東京ギフトショーにて、初めて吉野材をアピールすることができました。 | |||||||||||||
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80年以上の高品質の間伐材を丸棒加工したユニット家具、ピュアティック | |||||||||||||
それをきっかけに、吉野林業の特徴を引き出せる商品作りに取り組み、展示会等を通して今までの商売では会うことのなかった人との出会いの中から、改めて吉野材の持つ魅力・特性を学ばせていただき、進むべき方向性が見えてきたような気がします。 | |||||||||||||
500年という歴史を持つ吉野林業、樽丸から高級建築材にいたるまで、素材の潜在能力を限りなく引き出せたのは、吉野地域の恵まれた自然環境と人による育林技術によるものだということが根底にあるということだけは確信して言えます。 | |||||||||||||
山作りというものは一年や二年でできるものではありません。また一人でできるものでもありません。一年一年の人と自然の積み重ねが、年輪となって10年・50年・100年といった大きな年輪を作り上げるのです。枝打ちをした軌跡、台風被害にあった軌跡、その時に生じたありのままを年輪に刻み込みます。 | |||||||||||||
吉野材の特徴のひとつである年輪幅の均一性、それは途切れることなく人と自然が調和し、作り上げた芸術作品だと思います。 だからこそ、山を知り、木を知る職人が吉野材を住まいとして提案できるしくみづくりが絶対に必要不可欠になってくると感じます。 そのしくみが安心した吉野材の住まい提案に繋がり、吉野の想いを伝えることに繋がると確信します。 |
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木を育てるプロ、木を料理するプロがいるのが吉野林業の特徴。もう一度吉野林業の原点に立ち戻り、同じ志をもって吉野の木と向き合うとき、吉野林業は新しい年輪を刻み始めるでしょう。 | |||||||||||||
山守をスポーツに例えると、駅伝のようなものです。 どんなに苦しくても諦めず、襷をつないでいくことで今を生きる山守の責務を果たしたいものです。 |
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吉野杉の伐採現場。先人より受け継いだ、素晴らしい宝物です。 | |||||||||||||
●<なかい・あきもと> 林業家。中神木材・代表。吉野町議会議員。 |
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